一級建築士試験は、建築業界でのキャリアを目指す人にとって、まさに 人生の関門 と言える難関試験です。
計画、環境・設備、法規、構造、施工の5科目をマスターしなければならず、さらにその後に待ち受ける設計製図試験の内容は非常に専門的で、学科合格者の中の3割しか突破できない過酷な試験となります。
みなさんこんにちは。一級建築士のねっくすです。
自己紹介ですが、私はR5入社でR5年の学科試験に一発合格しました。製図試験はR6に合格して、晴れて一級建築士になることが出来ました。
この記事では、学生さんや設計業務に携わっていない方でも実行可能な 効率的な勉強スケジュール と、知識の覚え方、モチベーション維持のコツを具体的に紹介します。
目次
1.試験までの全体像を把握する

まずは試験日から逆算し、勉強期間を区切ることが大切です。独学の場合、一般的に 1年〜1年半 の勉強期間を確保すると安心です。社会人なら仕事、学生なら授業や実習の影響もあるため、時間を確保できる長期計画が必要です。
実行できる長期計画が完成したら、あとはその道に沿って正しい勉強を進めていくだけで、合格することが出来ます。つまり、この計画を実行していくことが何よりも大切で、難しいことなのです。
突然、1日の多くを勉強時間として確保しても、なかなかルーティン化出来ないと思います。初めのうちは勉強に慣れる時間を確保するという意味合いで、机に向かう時間を1〜2時間にしてみるというのもアリかもしれません。
勉強期間は大きく3つのフェーズに分けます。また、今回は試験の中で最も配点が大きい構造と法規に絞って説明していきます。
1.基礎を固める(1〜4ヶ月目):土台作りの期間
一級建築士試験における基礎固めの期間は、言わば「建築士としての土台」を作る非常に重要なフェーズです。この期間に覚えることが大変なボリュームのある分野や、構造力学の考え方などの知識を身につけておくことで、応用力アップや総仕上げの時期にスムーズに進むことができます。
特に学生にとっては、授業や課題との両立も考えながら計画的に進めることがポイントです。
法規
まずはじめにやるべきことは、法令集へのアンダーライン引きとインデックスの作成です。これが出来ないと法規の勉強が始められないので、勉強を始めた次の日には行うようにしてください。
最初の1か月は教科書やそれに対応した条文を読む→意味を簡単に理解→暗記のサイクルで進めます。
全部を理解しようとせず、試験で使える「知識」として覚えることがコツです。
法規の試験は法令集の持込み可ですが、全てを調べていては時間が確実に足りなくなります。なので、一つでも多く暗記することが重要となります。
条文の暗記にはフラッシュカードやスマホアプリを活用すると、通勤・通学中などの隙間時間で効率的に学習することができます。ちなみに僕も現役時代に勧められていましたが、全くやりませんでした。
最初に手をつけるべき分野は次の通りです。
- 用語の定義
- 面積・高さの算定
- 確認申請 ※苦手な人が多い
- 耐火・防火
- 防火区画等 ※苦手な人が多い
- 内装制限
最初に行うこれらの分野は、受験生がよく間違う分野です。時間をかけてでも確実に点が取れるように、知識を自分のものにしてください。
構造
構造の勉強はまずは力学の計算問題から始めるようにしてください。これは、文章問題は力学の知識が必須となるためです。
現役時代の受験生も、文章問題と力学を別のものと捉えて勉強していたため、理解するのに時間がかかりすぎて得点が全然伸びていなかったように感じていました。
逆にいうと、力学を完璧にした状態で文章問題の勉強を始めると、超効率的に理解していくことが出来ます。
次に具体的な手順ですが、構造計算は公式などを暗記して、問題に当てはめる練習から始めます。
まずは公式を「問題を解くための手順」として覚え、理解は後で補う戦略が有効です。教科書を読んでも理解できない場合は、問題集の答えを一度確認するのも賢い方法だと思います。
これは構造に関わらず全ての科目に共通して言えることです。よくわからない専門用語を無駄に調べるのではなく、「この用語のそういうものがあるんだな」くらいで流すことも重要となります。
また、構造力学は図解や簡単な模式図を描くことで、頭の中で流れを整理しやすくなりますよ!
学生が基礎固めで意識すべきポイント
- 理解できない部分は無理に理解せず暗記する
- 全てを理解しようとすると時間が足りなくなり、わからないことが多すぎることでモチベーションも下がります。
- 「呪文のように覚える」戦略は、試験合格のための正当な方法です。私も初受験が入社年だったため、ほぼ呪文で覚えました。それでも点は取れるので大丈夫です。
- ノートにまとめるより「使える暗記」を優先
- 学生はついノートに完璧にまとめたくなりますが、時間がかかりすぎます。
- 「ノートの方が見返しやすいから綺麗にまとめたい」という方へ。これから破れるくらい教科書を見返していきます。見返したい内容なんてページ数まで言えるほどに嫌でもなるので大丈夫です。
- 条文・公式・寸法などは、問題を解くための 最小限の暗記データ として整理すると効率的です。
基礎固めを終えた時の状態
以下の状態になると、基礎固めの段階はほぼ完璧といえます。
- 法規の条文や構造の基本公式が手元で使える
- 過去問を見て「どこから手をつければよいか」が判断できる
- 毎日の学習習慣が身についていて毎日机に向かうことが苦にならない ←1番大切!
この状態になれば、次の応用力アップフェーズに進む準備は完璧です。
応用力アップ(5〜9か月):基礎知識を実践力に変える
基礎固めを終えたら、次は 応用力アップのフェーズ です。この期間は、基礎知識を単なる暗記から「使える知識」に変え、試験本番でスムーズに解答できる力を養うことが目的です。
また、この期間でも新規の内容を頭の中にどんどん入れていきましょう。
特に学生の場合は、授業や課題で得た知識をうまく取り込みながら、過去問や模擬問題を活用することが効果的です。
法規
- 過去問を分野別に整理し、出題パターンを把握していく。
- 条文を暗記するだけでなく、「どの場面・どういった単語が出てきた時に使うか」を意識して問題を解く
学生向けアドバイス:理解できない部分はまだ「呪文」でOK。「この単語が出てきたら◯条を開く」くらいで大丈夫です。
重要なのは 正しい条文を選んで使えることと間違った時に解説を読んで、正しい知識と解法を都度身につけることです。
構造
- 計算問題はパターン別に整理し、公式を当てはめる演習を中心に行なっていく
- 文章問題と力学の計算問題を並行して勉強する
この時期から文章問題に入ることが出来たらとても良いペースということが出来ます。
文章問題は、例えば鉄骨とRCの特性を逆にして出題してくるなど、二つを正しく理解していないと躓く人がとても多い分野となります。
間違えた問題をまとめて、自分の苦手な問題の傾向を洗い出すことが大切です。
また、鉄骨造の構造的特性の問題を出された際、RCの特性も何も見ずに説明できる状態にしておくことができると、理解が深まり本試験にも対応できるでしょう。
応用力アップの期間に目指す状態
応用力アップ期間を終える頃には、次の状態を目指します
- 法規・構造の知識を問題で8割ほどは迷わず答えられる
- 過去問で間違えた部分が少なくなり、弱点が明確になっている
- 試験本番で「どの問題から手をつけるか」が自分の中で決まっている
この段階までくれば、最後の 総仕上げフェーズ で知識を最終確認し、本番対応力を磨くだけで合格レベルに到達できます。
総仕上げ(10〜12か月):合格力を完成させる最後の1〜2か月
一級建築士試験の総仕上げフェーズは、これまで積み上げてきた知識と技術を 本番レベルに仕上げる期間 です。
基礎固めで覚えた知識、応用力アップで身につけた実践力を、ここで確実に統合します。特に学生は授業や課題で時間が限られるため、効率的な学習計画と優先順位の見極めが不可欠です。
科目別総仕上げのポイント
法規
- 過去10年分の過去問を再度解き直し、 出題頻度の高い条文やパターンを完全暗記
- 条文の暗記はまだ呪文的でもOK。ただし、問題を解く中で使える状態にしておく
- 法規の条文同士の関連性を整理すると、複雑な問題にも対応しやすくなる
都市計画法・関係法令は基本的に法令集を引かなければならない問題が多くなっています。これらの問題に時間を使えるように、確認申請や防火区画分野はなるべく暗記で答えられる状態に持っていくことが理想的です。
また法規に関しては、どの問題から解くか決めておきましょう。私は容積率・建蔽率などの計算問題を終わらせてから(1)から解いていました。
構造
- 過去問で繰り返し計算パターンを復習
- 教科書の隅々まで目を通し、補足の内容も頭に入れておく
- 文章問題は間違えた問題を繰り返し解き、誤った解釈をゼロにする
この段階でも、力学の計算問題は毎日することをお勧めします。
またこの段階では問題を繰り返し解くことは重要ですが、教科書の隅々まで目を通し、補足内容まで頭に入れておくことが、本当に大切です。
私が実際に経験したことですが、構造の文章問題は教科書の細い字や端に書いてある補足内容から多く出題されました。教科書に覚えていない内容があれば、付箋を貼っていつでも見直せるようにすることが大切です。
総仕上げの学習法
- 模擬試験の活用
- 週1〜2回は模擬試験形式で法規・構造を解く
- 制限時間内に解くことで、本番の緊張感に慣れる
- 結果は弱点補強のデータとして活用
- 弱点集中補強
- 間違えた箇所だけをまとめて重点的に復習
- 理解できない部分は呪文のように暗記して大丈夫なので、学習したという自信を持つ
- 暗記の最終チェック
- 条文・公式・寸法・配置ルールをフラッシュカードやスマホアプリで毎日確認
- これにより、本番で迷う時間を最小化できる
この時期に最も効率的な学習は、資格学校が提供している模擬試験を受験することです。
学科のボーダーラインは約90点です。過去問だけを完璧に解けるようにしていても、70〜80点が限界ラインです。この足りない10〜20点を底上げしてくれるのが、資格学校の模擬試験です。内容も教科書の端に書かれているようなマニアックなことも出題されていたため、本試験と同レベルの難易度のためお勧めです。
まとめ

一級建築士試験合格のカギは 計画性 と 継続力 です。この記事の戦略を実行すれば、学生でも忙しい社会人でも無理なく一級建築士試験に合格できる土台が整います。焦らず、3フェーズを順番に積み上げることが合格への最短ルートです。
長く険しい道となりますが、みなさんが合格できることを願っております。頑張ってください!
